2007.03.14 Wed
家族の短歌≪納豆の大ドンブリ≫ 寺門孝之・絵 穂村弘・編

短歌なんかに 興味はなかった。  この本に出会うまでは。




気鋭の歌人、穂村弘さんが選んだ 新旧14首の短歌に、 寺門孝之さんが絵を描く。

本の題にもなっている 笹公人さんの歌
十二人家族のつくる納豆の大ドンブリのねばりを思え

本のつくりがちょっと変わってる。 見開きとなる 右のページに 短歌と、 絵が少しのぞいているだけ。 左のページは折りたたまれ 歌人の紹介文が載っているだけ。 
正直に言うと 最初は「この歌は何を歌っているのだろう」などと じっくり考えず、
短歌を読んですぐに 折りたたまれた左ページを開け 絵の全体を見た。
そして 息がとまった。
そこにあったのは まさに 『十二人家族のつくる納豆の大ドンブリのねばり』 の世界だった。

短歌。五七五七七の三十一音の世界。
その三十一音から こんなに 奥底のしれない 深い世界が広がっていくとは。


よく知っている歌もある。 斎藤茂吉さんの歌。

みちのくの母の命を一目見ん一目見んとぞただにいそげる

自分の中にある この歌の風景。 それと比べようと ページをめくるのも もどかしく。
そして やっぱり 息がとまった。
こんな「みちのくの母…」もあったんだ。 でも確かに「みちのくの母…」。
心にシンシンと染みるように 母への思いが伝わってくる。 まさに「みちのくの母…」だった。


寺門さんが描く人は 『角(つの)』を持っている。
家族の短歌に 存在感がありなおかつどこか幻想的な 角のある人たちの絵が まさにぴったり。

この絵本の素晴らしさは 短歌と絵の融合によって 新たな世界の創造につながっているところ なのだろうと思う。
言葉の命が凝縮されている 三十一音と、 深い精神性を感じさせる絵が
同じ 一枚の紙の上に乗り 二つの世界が
重なり合わさり 新たな世界を作り出す。
谷川俊太郎さんの詩に長新太さんの絵が添えられた時 たまらなく魅力的に感じるのと どこかしら通じるものがあるようにも思う。
それはまた、料理の出汁が昆布や鰹など、合わせることで それまで想像も出来ないような複雑でより深い味わいが生まれるのと どこか似ている。
ちょっと変わった本のつくりが そんな出会いに 小気味いい効果を付け加えることに成功している。
絵本の可能性を 無限に感じさせる一冊。


 この本をより楽しむには
まず 右のページの短歌を じっくり眺めて 自分の中にその短歌の世界をしっかりつくってみる
そのあと おもむろに 左のドア(ページ)を ゆっくりと開く。
そこで交わる 歌人の世界と あなたの世界と 画人の世界。

短歌って 解らない… そんな心配をお持ちなら ちゃんと解説もついている。
それを読んだあと 短歌に立ち戻り 短歌の雰囲気をしっかりつかんだ後に
上記の読みかたをしてみると
この本の 不思議なつくりが がぜん生きてくるということに ハッと気づくのではないかしら。 

全文ルビがふってあるのは 小さなお子から 短歌を楽しんで欲しいという 願いがあるのだろう。
そういう試みも含めて これから ますます このシリーズが進化していくといいなぁと思う。


願わくは 選者の解説は、絵に直に挿入されるのではなくて
巻末あたりにまとめるか、せめてもう少しトーンを落とした色にしていただきたかったなぁ。
短歌を読んで 自分の世界をつくったあと 左ページをめくったときの 爆発的なヨロコビが 解説の文字の色で 気が散って そがれてしまうから。


いつのまにか 短歌って面白い! ワクワクする! と思っていました。
つくってみよう! とまで思ってしまったのは、ちょっとノリすぎ?(笑 


〔寺門孝之さんのHP〕  てらぴかのえんがわ


〔寺門孝之さんのブログ〕 てらぴかのえんがわ Today's Terapika


[ 穂村弘さんのブログ〕   穂村弘情報


 ☆  納豆の大ドンブリ 早くも増刷決定!  
    いい絵本が復刻されたり、最近の絵本界、児童書界は
    少し元気が出てきているのでしょうか。うれしい増刷のニュース。


 ☆  納豆の大ドンブリ 『夏休みの本(緑陰図書)』に!
    私の大好きな納豆の大ドンブリが、なんと、全国学校図書館協議会が選ぶ『夏休みの本』  に選定されたとのこと!
    全国の子ども達に納豆の大ドンブリが手渡る姿を考えるだけで楽しい。
    しかし、中学校での推薦というにはもったいない。
    小学校でこの本に触れて欲しいと思うのは私だけ?



 

 00:00:00   comment:2   trackback:0   [絵本]
てらぴかさんのところから、こんにちは!
凄く素敵な紹介で、ここに書かれている事
是非とも実行したいと思いました。
私も歌人の画人の世界に交わってみます。
by: ねこじる | 2007.03.15 02:15 | URL | edit
ねこじるさん。こんにちは。
てらぴかさんのところからようこそ。
とても素敵な本です!短歌をこんなに身近に、しかも劇的に感じさせてくれるなんて。この本を作られた方、皆さんに感謝です。
よかったら是非是非この方法、お試し下さい。
そしてねこじるさんの新しい発見もぜひお知らせ下さいね。
by: midori | 2007.03.15 13:17 | URL | edit














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