2006.10.21 Sat
たこ焼き  ≪向ヶ丘遊園≫
就職してしばらく、 小田急線の向ヶ丘遊園に住んでいた。
体力勝負仕事でドロのように疲れ、ヘロヘロしながら遊園の駅にたどり着く。
冬にさしかかるあたり 改札を出た目の前に たこ焼き屋の屋台が。

関西の出身なもので、こういう屋台はチェックせずに通り過ぎることが出来ない。
チラッと見たら、その当時関東の屋台には珍しく、大きなぶつ切りのタコが山積みになっていた。
ついフラフラッと屋台に近寄る。
まずは味見を。
「一つ下さい」
「アイヨ!」
こがっちりした四角い体型のおじさん (といっても今思えば40代前半あたりかな) が
ささっと焼きたてのたこ焼きを包んでくれる。
その当時、いくらだったのかなぁ。でも、普通の出店で買うより たこ焼きの一粒一粒が大きくて、お得な感じがした。本当に薄給だった私が買おうと思ったんだから、そんなに高い値段じゃなかったと思う。20年ちょっと前、8個入りで350円前後だったんじゃないかな。

芯から疲れた身体に、そのたこ焼きはずっしりとおいしかった。
見た目だけじゃなくて、中にもしっかり具がつまった、そして、タコがでっかい、重量感あふれる上に
油粕やらネギやらにもいやな癖がない、良心的な素材の味が 家庭的でうれしかった。

本当に おいしかったなぁ…

しばらくは週に1回くらいはそこでたこ焼きを買って帰った。
元気に帰ってこれた日は 家に帰ってからご飯を作って食べる気力が残っているから
薄給の悲しさ、我慢。
でも、就職1年目のこの年は、本当に疲れて帰る日が多かった。
たこ焼きのホカホカした暖かさを手のひらに感じながら、一人暮らしのアパートに向うと
アパートに帰ってからの楽しみを思い、疲れを少しは忘れられた。


2年目の冬。
少し余裕が出てきて、それほどドロドロに疲れて帰ることも少し減ってきた。
仕事の手際もよくなったのか、帰る時間も1年目より早くなったのだろう。
駅を出ると、まだ店を出していないか、まだ仕込み中に出会うことが多くなった。
それでも、まだ1年前のことなのに 懐かしいし、よそで満足できる『粉物』 (関西人はたこ焼きやお好み焼き、うどんなど小麦粉などを使った料理を『粉物(こなもん)』と呼ぶことが多い) に出会えなかったという事もあっただろうな。
屋台をやっている時間に出くわすと うれしくて懐かしくて やっぱり時々買っていた。


あるとき、ふとおじさんが
「ねえちゃん、たこ焼き好きだねぇ」 と言った。
「うん、おじさんとこの、おいしいもん」 みたいなことを言ったんじゃないだろうか。
「この仕事もけっこう儲かるもんだよ。 頑張り次第で月30万40万。ねえちゃん、たこ焼き屋も商売として考えてみなよ」
本気なのか、愛想なのか。今では半々だったのかなとも思うけど、その当時の私はおぼこだったのでビックリした。 頑張り次第で30万、というのも すごくココロひかれた。でも、
「え〜、そんなに儲かるんだ〜!いいなぁ…」 くらいに多分流したんだろうなぁ。


チェッカーズがライブをやった向ヶ丘遊園は しばらく前に閉園したが、小田急の向ヶ丘遊園駅は残っている。
今でもあのたこ焼き屋の屋台は 冬になると店を構えるんだろうか。
あそこで勧誘された女子大生とかが 店をまかされて張り切って
でかいタコのたこ焼きを焼いてたりするんだろうか
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